投資契約書

準拠する法律
会社法
  • 契約書の内容によってはその他必要書類があります。

法律事務所による投資契約書解説

創業して間もないベンチャーやスタートアップ企業では、資金調達の手段として、VC(ベンチャーキャピタル)、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家から投資を受けることがあります。しかし、投資を受けるにあたり「投資契約を締結していない」「出資側が作成した契約書をそのまま受け入れている」という企業も少なくありません。

法律上、株式会社がVCや投資家から資金調達を行うには、法的な手続きを遵守してさえいれば、改めて投資契約を締結する必要はありません。とはいえ、出資条件や株式に関する内容をよく検討せず投資を受けてしまうと、自社にとって不利益な内容で投資が実行されたり、トラブルが起きたときに自社を守れないといったリスクが潜んでいます。

そのため、出資を受ける際には「投資契約書」を作成し、「自社にとって妥当な投資条件であるか」「自社に不利益な条件はないか」などを慎重に取り決めることが望ましいといえます。また、投資契約だけでなく「株主間契約」も同時に締結されるケースもあるため、契約の目的やその違いを把握しておくことが非常に重要です。ここでは、投資契約書の必要性や株主間契約との違いをはじめ、雛形と作成ポイントについて解説します。

投資、VCに関する契約のための投資契約書のポイント

  1. 投資家が出資をする際に発行会社との間で締結する契約
  2. 投資家の立場では、投資の実行条件や投資後に発行会社に守らせる誓約条項、exitに関する規定が重要
  3. 発行会社の立場では、誓約条項や取締役選任条項等、経営に関する規定等を確認することが重要
投資、VCに関する契約のための投資契約書の注意点

  1. 通常、契約書を作成した側に有利な内容となっていることが多いので、精査が必要
  2. 発行会社の経営方針や資金用途を規定しないと、せっかくの投資が無駄になってしまうこともあります
  3. 投資家と発行会社の両者がwin-winの関係になることがベスト

投資契約書とは

投資契約の締結に用いられるものを「投資契約書」といいます。

投資契約とは、ベンチャー・スタートアップ企業が資金調達のために、VC(ベンチャーキャピタル)、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家(※)などから出資を受けるときに締結される契約です。

投資契約書の作成にあたっては、会社から出資者に対して割り当てる株式の種類・価格・払込期日などの基本的な投資条件を定めることになります。そのほか、投資の引き上げに関する条項、イグジット(出口戦略)に関する条項など、さまざまな項目を盛り込む必要があります。

ただし、投資家が出資する額や、ベンチャー・スタートアップ企業のバリュエーション(企業価値評価)によって、投資内容の相場観は異なります。そのため、自社に妥当な投資条件となるよう適正な契約書を作成し、リスクについても十分把握しておかなければなりません。

投資契約書で締結する主な内容には以下が挙げられます。

  • 株式の募集に関する事項(種類・価格・払込期日、譲渡など)
  • 投資のための条件
  • 投資撤退に関する事項
  • イグジット

これらは、投資を受ける企業が不利な状況で契約するのを防ぎ、投資の実行前・実行後に投資家とトラブルが起きないよう防ぐ役割を果たしています。

※VC(ベンチャーキャピタル):高い成長が予想されるベンチャー企業やスタートアップ企業に投資を行い、企業が成長したときに株式売却によって利益を得ることを目的とした出資会社のこと。

※CVC(コーポレートベンチャーキャピタル):事業会社が、自社とのシナジー効果等を期待して、ベンチャー企業やスタートアップ企業に投資を行うこと。

※エンジェル投資家:個人あるいはグループが、ベンチャー企業やスタートアップ企業に投資を行い、見返りに株式や転換社債を受け取る投資家のこと。

投資契約書の必要性

ベンチャー・スタートアップ企業が出資によって資金調達を行う際、法律上、投資契約を締結する義務はありません。契約書がないということはあまりないと思いますが、中身を吟味していると言えない場合をしばしば見受けます。しっかりと、投資契約書を検討することが必要です。

投資を受ける会社(発行会社)が注意しておきたいのは、VCやその他出資者が提示した契約書を安易に受け入れてしまうと、「出資者側の利益に偏った契約」になってしまうケースがあるということです。

投資家は、高い成長が予想される企業に対して出資を行いますが、株式の売却時に十分な投資利益が得られないリスクも抱えています。こうしたリスクに備えて、自分たちが有利な投資条件を提示してくる可能性があるのです。このような不利な条件での投資契約は、ベンチャー・スタートアップ企業にとってもリスクが高いものといえます。

起こり得るトラブルには、以下のようなものが挙げられます。

  • 出資後の経営に制約が発生し、経営の自由度が低くなる
  • 企業が上場せずIPO(※)を実現できなかったときに、投資先に相当高額で株式の買収を求められる
  • 追加融資が受けられないよう制限される
  • 契約違反を不当に主張される

※IPO:制限的に所有されたいた自社の株式を、新たな出資者に譲渡できるようにすること。株式公開とも呼ばれる。

VCやエンジェル投資家から出資を受けるときは、自社の企業価値評価や成長ステージごとに「どれくらいの資金が必要か」「どこから資金調達をするか」を見定めるとともに、自社の成長度合いに合わせて、その時々で妥当性のある投資契約を結ぶことが非常に重要です。

出資者から一方的に投資契約書を提示された場合には、そのまま受け入れてしまうのではなく、弁護士に相談して「投資内容が妥当なものか」判断することをおすすめします。契約書には会社の根幹関わる条項も含まれているため、自社にとって不利益な内容である場合は、出資者との契約交渉も視野に入れるべきといえます。

投資契約書と株主間契約との違い

企業が投資を受ける際に交わされる契約に「株主間契約」というものがあります。「投資契約」との関係性も深いことから、その仕組みを正しく理解しておかなければなりません。

株式間契約とは、投資実行後の主要な株主(投資家)と、発行会社・創業株主との株主間で、その会社の運営方針や権利義務等について取り決める契約のことをいいます。

ベンチャー・スタートアップ企業がVCなどから投資を受ける際、個々の投資家と投資契約を結ぶことが一般的ですが、企業が成長するに連れて異なる投資家から資金調達をするケースも増えてくると予想できます。

このような場合、投資契約であれば、当事者間だけで権利義務関係が発生するため、他の株主に契約の効力は及びません。投資家が少数しかいない場合には「投資契約のみの締結」で問題ないかもしれませんが、他の株主を契約当事者として効力を及ぼすには「株式間契約」が必要になります。

また、会社の役員の選任・解任などを行う際には「株主総会による多数決」で決定されます。投資契約では「株式会社・投資家・創業株主」のみが当事者となるため、契約書に役員に関する条項を盛り込んでいても、他の株主を拘束する効力は及びません。株主間で経営に関するを合意しておくためには、株式間契約が必要だと考えられるでしょう。

株式間契約で規定される主な内容には、

  • 株式の処分に関する事項
  • ベンチャー、スタートアップ企業の経営に関する事項
  • 投資家のイグジットに関する事項
  • 追加出資に関する事項

などが挙げられます。
会社の持ち株比率を考慮するとともに、後に起こり得る紛争リスクに備えて、必要に応じた契約書を締結することが重要です。

その他(エンジェル税制)

ベンチャー等への投資を促進するために、個人投資家に対して税制上の優遇措置を認める税制です。エンジェル税制を利用できる環境を整えておくことで、個人投資家から集めやすくなるでしょうし、対象となるのであれば活用することをお勧めします。

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